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旅先のお土産屋さんや工芸品のお店で、こけしを見かけることがありますよね。どれも同じように見えて、よく見ると顔の表情や頭の飾り、胴の模様がずいぶん違います。
実は、東北地方で昔から作られてきた伝統こけしは、産地ごとの特徴によって11の系統に分けられています。この記事では、東北経済産業局や宮城県の公式サイト、工芸品の解説記事で確認できた内容をもとに、こけしの11系統の産地と特徴をやさしく整理しました。お気に入りのこけしを選ぶときや、旅先でこけしを見るときの参考にしてみてください。
※系統の分け方や呼び方には諸説あり、資料によって表記が異なることがあります。この記事では、東北経済産業局のサイトで紹介されている11系統の分け方に沿ってご紹介します。
こけしの「系統」とは?
産地ごとに受け継がれてきた形と模様
日本伝統文化振興機構(JTCO)のサイトで紹介されている宮城伝統こけし組合連合会の説明によると、伝統こけしは、親から子、師匠から弟子へと技法や形式が何代にもわたって受け継がれる中で、その土地の風土に合ったものが作り出されてきました。そうして、土地ごとに共通する形やつくり、顔の表情や胴模様などを持つこけしが定着していったそうです。
このように地域独自の特徴を持つこけしの一群を「系統」と呼び、東北6県で作られるこけしは11の系統に分けることができる、と説明されています。系統の名前には、主だった産地の名前がつけられています。
こけしはいつごろ生まれた?
東北経済産業局のサイトでは、こけしは江戸時代末期の文化・文政(1804~1830)の時代に創始されたと考えられると紹介されています。木工用のロクロを使って椀や盆などの器を作る「木地師」と呼ばれる職人の一部が、土地のニーズに応えて独楽などの木地玩具を作るようになり、その技法が東北地方の木地師にも伝わったそうです。
同じページでは、残る文献から、こけしは宮城県の作並温泉に住む工人が最初といえるだろう、とも説明されています。
JTCOのサイトでは、当時の農村には冬の間に近くの温泉地へ湯治に行く習慣があり、湯治場の近くに住む木地師たちが、こけしや独楽などを湯治客向けのみやげ物として売るようになった、という説が紹介されています。また、「こけし」という呼び名が統一されたのは昭和15年頃のことで、それまでは東北各地でさまざまな方言で呼ばれていたそうです。
こけしの11系統と主な産地
東北経済産業局のサイトで紹介されている11系統と主な産地は、次のとおりです。
| 系統 | 主な産地 |
|---|---|
| 津軽系 | 青森県:温湯温泉、大鰐温泉など |
| 南部系 | 岩手県:盛岡市、花巻市、宮古市など |
| 木地山系 | 秋田県:大館市、湯沢市など |
| 遠刈田系 | 宮城県:遠刈田温泉 |
| 弥治郎系 | 宮城県:白石市、鎌先温泉、小原温泉など |
| 作並系 | 宮城県:仙台市、作並温泉 |
| 鳴子系 | 宮城県:鳴子温泉 |
| 肘折系 | 山形県:肘折温泉、宮城県:仙台市 |
| 山形系 | 山形県:山形市、米沢市、天童市など |
| 蔵王高湯系 | 山形県:蔵王温泉 |
| 土湯系 | 福島県:福島市、飯坂温泉、土湯温泉など |
多くの系統が温泉地の名前になっているのは、こけしが湯治場のみやげ物として広まってきた歴史と関係がありそうですね。
こけし11系統の特徴と見分け方
ここからは、11系統それぞれの特徴を見ていきます。特徴は、中川政七商店の読みもの「こけしとは。みちのくの風土が育んだ魅力と歴史」や、こけしの解説記事などで紹介されている内容をもとにまとめました。同じ系統でも、工人(こけしを作る職人)によって表情や模様は異なります。
1. 鳴子系(宮城県・鳴子温泉)
頭と胴を別々に作り、ろくろの回転と摩擦熱を利用して頭を胴にはめ込む「はめ込み式」で作られていると紹介されています。頭を回すとキイキイと音が鳴るのが特徴です。前髪の上に「水引」と呼ばれる赤い髪飾りが描かれ、胴には菊や牡丹、楓などの模様が描かれます。
2. 遠刈田系(宮城県・遠刈田温泉)
頭頂部に「手柄(てがら)」と呼ばれる赤い放射状の模様が描かれているのが特徴とされています。頭と胴は、胴に穴をあけて頭を差し込む「差し込み式」で、大きな頭とまっすぐな胴の形が紹介されています。胴には菊や梅などの花模様、木目、ろくろ線などが描かれます。
3. 弥治郎系(宮城県・白石市、鎌先温泉など)
頭頂部に、ベレー帽のようなカラフルなろくろ線の模様があるのが特徴と紹介されています。差し込み式で、胴にはろくろ模様や菊などの花、襟や裾が描かれた着物姿のものもあるそうです。
4. 作並系(宮城県・仙台市、作並温泉)
宮城県内の5系統のひとつで、JTCOのサイトでは、遠刈田、弥治郎、作並、肘折の各こけしは「さし込み」という方法で作られていると説明されています。こけしの解説記事では、細い胴と、胴の裾を絞った形が特徴として紹介されています。
5. 肘折系(山形県・肘折温泉、宮城県・仙台市)
東北経済産業局のサイトでは、鳴子系の形態と遠刈田の描彩様式が融合した系統として紹介されています。中川政七商店の読みものでは、11系統の中で唯一、唇がしっかりと描かれていると紹介されていて、見分けるときの手がかりになりそうです。
6. 蔵王高湯系(山形県・蔵王温泉)
遠刈田系から派生した系統と紹介されています。おかっぱ頭や、頭頂に赤い放射状の「手柄」が描かれたものがあり、胴模様は菊や桜くずしが主流で、牡丹もあるそうです。太くてどっしりとした胴が多いとされています。
7. 山形系(山形県・山形市、米沢市、天童市など)
山形市などを産地とする系統です。こけしの解説記事では、小さめの頭や、紅花や牡丹の模様が特徴として紹介されています。資料によっては作並系と合わせて「山形作並系」と扱われることもあると説明されていて、分け方に違いがある系統です。
8. 土湯系(福島県・土湯温泉、飯坂温泉など)
福島県の土湯温泉などを産地とする系統です。こけしの解説記事では、頭に描かれた蛇の目模様や、細い胴に引かれたろくろの横縞が特徴として紹介されています。土湯温泉は、鳴子温泉・遠刈田温泉とともに「三大こけし発祥の地」と紹介されることがあります。
9. 津軽系(青森県・温湯温泉、大鰐温泉など)
青森県の温湯温泉や大鰐温泉などを産地とする系統です。こけしの解説記事では、ねぶたや牡丹などの模様が描かれたものが紹介されています。中川政七商店の読みものでは、鳴子の木地職人による講習会が行われたこともあり、鳴子系の影響もみられると紹介されています。
10. 南部系(岩手県・盛岡市、花巻市など)
岩手県の盛岡市や花巻市などを産地とする系統です。こけしの解説記事では、彩色が少なく素朴なもの、赤ちゃんのおしゃぶりとして使われた「キナキナ」が原型と紹介されています。
11. 木地山系(秋田県・大館市、湯沢市など)
秋田県の湯沢市などを産地とする系統です。こけしの解説記事では、縦縞の着物に、梅などが描かれた前垂れの模様が特徴として紹介されています。
宮城伝統こけしに指定された5系統
国の伝統的工芸品に指定
宮城県の公式サイトでは、宮城県内には「鳴子こけし」「遠刈田こけし」「弥治郎こけし」「作並こけし」「肘折こけし」の5系統があると紹介されています。これらは「宮城伝統こけし」として、昭和56年(1981年)6月22日に経済産業大臣指定伝統的工芸品(当時は通商産業省告示)に指定されました。
JTCOのサイトでは、宮城県内には「鳴子」「遠刈田」「弥治郎」「作並」の4つの本流に「肘折」を加えた5つの系統があり、これがまさに「こけし王国」といわれるゆえんだ、と紹介されています。11系統のうち5系統が一つの県で作られているというのは、たしかに驚きですね。
材料と作り方
宮城県の公式サイトでは、宮城伝統こけしの原材料はミズキ、イタヤカエデ、ウリハダカエデとされています。主な作業工程は「木取り→荒挽き→仕上挽き→描彩→組付け」と紹介されています。
JTCOのサイトでは、原木は秋に伐採し、こけし用材として使えるようになるまで、伐採から約半年かかると説明されています。
こけしを見に行ける宮城県の施設
宮城県の公式サイトでは、産地ごとに次のような施設が紹介されています。見学や体験の内容、休館日は変わることがあるので、出かける前に各施設の公式サイトで確認してください。
| 施設 | 場所 | 宮城県サイトでの案内 |
|---|---|---|
| 日本こけし館 | 大崎市鳴子温泉 | 1月1日から3月31日まで休館、見学・体験可(有料) |
| みやぎ蔵王こけし館 | 蔵王町遠刈田温泉 | 年中無休、見学・体験可(有料) |
| 弥治郎こけし村 | 白石市福岡八宮 | 毎週水曜日休村(祝祭日の場合は翌平日)、見学可(無料)、体験可(有料) |
仙台地区の伝統こけし工人組合については、見学・体験は各工房に問い合わせるよう案内されています。
こけしの系統でよくある質問
伝統こけしと創作こけしは違うの?
この記事でご紹介した11系統は、東北地方で昔から受け継がれてきた伝統こけしの分け方です。伝統の型にとらわれず、作家が自由に形や模様をデザインしたこけしもあり、伝統こけしとは区別して呼ばれることがあります。購入するときは、商品説明で系統や産地、作者名を確認してみてください。
系統はどこを見れば見分けられる?
まずは、頭のつくり(はめ込み式か差し込み式か)、頭の飾り(手柄や水引、ろくろ線など)、胴の形と模様を見てみるとよいでしょう。ただし、同じ系統でも工人によって表情や模様は違います。お店の方や施設の解説を参考にしながら見比べると、楽しく覚えられます。
「三大こけし発祥の地」とはどこ?
こけしの解説記事では、最も古いこけしの生産地として、鳴子温泉(宮城県)、土湯温泉(福島県)、遠刈田温泉(宮城県)の3か所が「三大こけし発祥の地」と呼ばれていると紹介されています。中川政七商店の読みものでも、伝統こけしの主な産地として、宮城県の鳴子温泉や遠刈田温泉、福島県の土湯温泉などの東北地方の温泉地が挙げられています。
こけしはもともと何のために作られたの?
中川政七商店の読みものでは、ろくろを使って椀や盆などを作る木地師が、子どものために作ったことが始まりとされ、子どものためのおもちゃが、次第に湯治客向けの土産物として親しまれるようになったと紹介されています。JTCOのサイトでも、子ども向けのおもちゃとして作られたという考えが有力だと説明されています。
こけしの頭が回るのはどうして?
鳴子系のこけしは、頭を胴にはめ込む「はめ込み式」で作られているため、頭を回すとキイキイと音が鳴ると紹介されています。頭を回せるからといって強くひねると傷む原因になることもあるので、やさしく扱ってあげてください。
こけしの系統を知って、お気に入りを見つけよう
こけしの系統について、もう一度まとめておきます。
- 伝統こけしは、東北6県で11の系統に分けられている
- 系統の名前には、主な産地の名前がつけられている
- 頭のつくり、頭の飾り、胴の形や模様に、系統ごとの特徴がある
- 宮城県の5系統は「宮城伝統こけし」として国の伝統的工芸品に指定されている
- 見学や体験ができる施設もあるので、出かける前に公式サイトで確認を
素朴な姿の中に、産地の風土や工人の技が受け継がれているこけし。系統の違いを知っていると、お店や旅先でこけしを見る時間が、もっと楽しくなりそうですね。